「うちの子、体が硬くて」
「ストレッチって、何歳からやらせたらいいんですか?」
保護者の方や部活の指導者の方から、こんな質問をよくもらいます。
「子どものうちに柔軟性を伸ばしておくといい」という話を聞いて、焦ってしまう方も多いようです。
そこで今回は、この疑問に近いテーマを扱った海外の研究を読んでみました。
2022年に国際誌 Sports Medicine – Open に載った、ギリシャとドイツの研究チームによる論文です。
どんな研究?
小学生くらい(6〜11歳)と、中高生くらい(12〜18歳)で、ストレッチをしたときに「関節の動く範囲」が広がる度合いに違いがあるのかを調べたものです。
1本の実験ではなく、これまでに報告された複数の研究結果をまとめて分析する「メタ分析」という方法が使われています。
結果その1:年齢で大きな差はなかった
この研究では、計画的にストレッチを続けた子どもたちは、小学生年代でも中高生年代でも、関節の動く範囲が広がっていました。
そして、その広がり方に年齢による差は見られませんでした。
「小学生のうちじゃないと遅い」というわけではなさそうです。
結果その2:「量」を見ると、少し違いが出た
おもしろいのはここです。ストレッチの量を多い群と少ない群に分けて見ると、
- 小学生年代では、量が多いほうが、動く範囲の広がりも大きかった
- 中高生年代では、量が多くても少なくても、広がり方は同じくらいだった
という結果でした。
著者たちは、小学生の時期には柔軟性が変わりやすい「チャンスの時期」があるのかもしれない、と考察しています。
読むときに気をつけたいこと
ここまで読むと「じゃあ小学生のうちにたくさんやらせなきゃ」と思うかもしれません。
でも、少し待ってください。
まず、「チャンスの時期」は著者たちの考察(仮説)で、まだはっきり証明されたことではありません。
また、この分析に含まれる研究は、ストレッチのやり方も時間も期間もバラバラです。
そのため結果のばらつきも大きく、数字を鵜呑みにするのは危険です。
そして、この研究が見ているのは「関節の動く範囲」だけです。
ケガをしにくくなるか、競技の成績が上がるか、という話ではありません。
私が現場で感じていること
論文とは別に、日頃のお子さんを見ていて思うことがあります。
ストレッチは、続かなければ意味がありません。
長い時間を無理にやらせるより、お風呂上がりに一緒にやる、練習後に1種目だけやる、くらいの軽さのほうが、結局は長続きします。
それから、必要な柔軟性は競技によってもお子さんによっても違います。
「みんな同じくらい柔らかくなければ」と考える必要はないと思っています。
まとめ
- ストレッチを続けると、小学生年代でも中高生年代でも、関節の動く範囲が広がったという報告がある
- 年齢による差は見られなかった
- 小学生年代では、量が多いほうが広がりやすい傾向があった。ただしまだ仮説の段階
- 研究ごとのばらつきが大きく、柔軟性以外(ケガ予防や競技力)への影響は、この研究からは分からない
体の硬さや、運動中の痛みが気になる方は、年齢にかかわらず一度お話を聞かせてください。
お子さんの様子を見ながら、一緒に考えていきましょう。
参考文献
Donti O, Konrad A, Panidi I, Dinas PC, Bogdanis GC. Is There a “Window of Opportunity” for Flexibility Development in Youth? A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med Open. 2022;8(1):88. doi:10.1186/s40798-022-00476-1
